金属組織写真賞作品


第72回金属組織写真賞 選評


 本年度の応募件数は1. 光学顕微鏡部門2件,2. 走査電子顕微鏡部門2件,3. 透過電子顕微鏡部門3件,4. 顕微鏡関連部門2件の計9件であった.
 選考委員会での事前評価結果を理事会において報告し,金属組織写真賞規則に従って,最優秀賞1件,優秀賞2件,奨励賞1件の授賞を決定した.
 Web審査を踏襲し,選考委員20名に順位点と評価点(5点満点),および評価の高い作品については選定理由の記載を依頼した.その結果,透過型電子顕微鏡部門から最優秀賞1件,光学顕微鏡部門と透過型電子顕微鏡部門から優秀賞2件,顕微鏡関連部門から奨励賞1件が選ばれることとなった

 最優秀賞「(Li, La)TiO3対応傾角粒界における局所イオン伝導測定および原子構造解析」(3. 透過電子顕微鏡部門)は,電気化学歪み顕微鏡法(ESM),走査透過型電子顕微鏡法(STEM),電子エネルギー損失分光法(EELS)を組み合わせて対応粒界のイオン伝導度を可視化し,その原子構造を詳細に解析することで粒界におけるイオン伝導性の変化を原子レベルで明らかにしたものであり,卓越した最先端顕微鏡技術であると同時に学術的価値の高い作品として評価された。
 優秀賞(部門別、受付番号順) 1件目「ポリアニリンによるNiの粒界を優先拡散する水素の可視化」(1. 光学顕微鏡部門)は,世界で初めて導電性高分子であるポリアニリン膜を使った金属材料中の水素分布の可視化する技法を示したものであり,従来の可視化技法に比べて広範囲にわたってリアルタイムで可視化が可能であることから,昨今,注目を集める材料中の水素の影響を調査・検討する上でも極めて重要な技法の確立であるとして高く評価された。
 優秀賞2件目「Pt3Co合金触媒粒子表面Pt skin層の精密原子間距離測定」(3. 透過電子顕微鏡部門)は,高角度散乱暗視野(HAADF)による走査透過電子顕微鏡法(STEM)にて,ピコメートルスケールの計測精度を実現し,これまで実測不可能だったPt3Co合金触媒粒子の表面Pt skin層の原子間距離の変化を明らかにした。これによって,表面制御による合金系触媒の設計指針を明確にしたことの意義は大きく,学術的成果についても高く評価された。
 奨励賞「同一視野の3DAP/STEM解析によるp型GaN中の転位ループへのMg偏析の観察」(4. 顕微鏡関連部門)は,低角度散乱暗視野(LAADF)による走査透過電子顕微鏡法(STEM)の観察視野において,転位ループや微小欠陥にMgが偏析している様子を3次元アトムプローブ(3DAP)で定量的に解明したことで, Mgイオン注入を伴うGaNパワーデバイス実現に向けて重要な技術的知見のみならず優れた学術的知見が得られたことが評価された。

 今回の選に惜しくも漏れた作品も,レベルの高い力作が多かった。他の学会に類を見ない独自性と学術性を重んじてきた金属組織写真賞の継続と発展のために,今後もますます優れた組織写真が応募されることを期待したい.

金属組織写真賞委員会委員長 吉見享祐(東北大学)



 ● 受賞結果:
  ・最優秀賞 1件  ・優秀賞 2件  ・奨励賞 1件
 ● 応募作品数:
  ・第1部門 2件  ・第2部門 2件  ・第3部門 3件  ・第4部門 2件
 



 最 優 秀 賞 

 
3. 透過電子顕微鏡部門(STEM, 分析等を含む)
 

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 応募部門  3.透過電子顕微鏡部門(STEM, 分析等を含む)
 題目  (Li,La)TiO3対応傾角粒界における局所イオン伝導測定および原子構造解析
作品の説明・学術的価値・技術的価値・組織写真の価値・材料名・試料作製法・観察手法・出典 説明文など
 応募者・
 共同研究者 
 1. 佐々野 駿, 東京大学
 2. 石川 亮, 東京大学
 3. 太田 裕道, 北海道大学
 4. 柴田 直哉, 東京大学
 5. 幾原 雄一, 東京大学

 優 秀 賞 

 
1.光学顕微鏡部門
 

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 応募部門  1.光学顕微鏡部門
 題目  ポリアニリンによるNiの粒界を優先拡散する水素の可視化
作品の説明・学術的価値・技術的価値・組織写真の価値・材料名・試料作製法・観察手法・出典 説明文など
 応募者・
 共同研究者 
 1. 柿沼 洋, 東北大学金属材料研究所
 2. 味戸 沙耶, 東北大学金属材料研究所
 3. 北條 智彦, 東北大学金属材料研究所
 4. 小山 元道, 東北大学金属材料研究所
 5. 秋山 英二, 東北大学金属材料研究所
 
3. 透過電子顕微鏡部門(STEM, 分析等を含む)
 

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 応募部門  3.透過電子顕微鏡部門(STEM, 分析等を含む)
 題目  Pt3Co合金触媒粒子表面Pt skin層の精密原子間距離計測
作品の説明・学術的価値・技術的価値・組織写真の価値・材料名・試料作製法・観察手法・出典 説明文など
 応募者・
 共同研究者 
 1. 大森 雄貴, ファインセラミックスセンター 
ナノ構造研究所
 2. 黄 馨慧, ファインセラミックスセンター 
ナノ構造研究所
 3. 仲山 啓, ファインセラミックスセンター 
ナノ構造研究所
 4. 小林 俊介, ファインセラミックスセンター 
ナノ構造研究所
 5. 桑原 彰秀, ファインセラミックスセンター 
ナノ構造研究所
 奨 励 賞 

 
4.顕微鏡関連部門(FIM, APFIM, AFM, X線CT等)
 

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 応募部門  4.顕微鏡関連部門(FIM, APFIM, AFM, X線CT等)
 題目  同一視野3DAP/STEM解析によるp型GaN中の転位ループへのMg偏析の観察
作品の説明・学術的価値・技術的価値・組織写真の価値・材料名・試料作製法・観察手法・出典 説明文など
 応募者・
 共同研究者 
 1. 埋橋 淳, 物質・材料研究機構
 2. Ashutosh Kumar, 物質・材料研究機構
 3. 田中 亮, 富士電機
 4. 高島 信也, 富士電機
 5. 江戸 雅晴, 富士電機
 6. 大久保 忠勝, 物質・材料研究機構
 7. 宝野 和博, 物質・材料研究機構



応募作品
 第2部門 



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 応募部門  2.走査電子顕微鏡部門(分析, EBSD等を含む)
 題目  低合金TRIP鋼の組織間炭素分配定量解析
作品の説明・学術的価値・技術的価値・組織写真の価値・材料名・試料作製法・観察手法・出典 説明文など
 応募者・
 共同研究者 
 1. 田中 裕二,
 JFEスチール株式会社スチール研究所
 2. 山下 孝子,
 JFEスチール株式会社スチール研究所
 3. 石川 伸,
 JFEスチール株式会社スチール研究所
 4. 田中 孝明,
 JFEスチール株式会社スチール研究所

 5. 田路 勇樹,
 JFEスチール株式会社スチール研究所
 第3部門 



 

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 応募部門  3.透過電子顕微鏡部門(STEM, 分析等を含む)
 題目  REBa2Cu3O7-y高温超電導接合線材の断面組織
作品の説明・学術的価値・技術的価値・組織写真の価値・材料名・試料作製法・観察手法・出典 説明文など
 応募者・
 共同研究者 
 1. 加藤 丈晴,
 ファインセラミックスセンター
 2. 吉田 竜視,
 ファインセラミックスセンター
 3. 横江 大作,
 ファインセラミックスセンター
 4. 大木 康太郎, 住友電気工業
 5. 永石 竜起, 住友電気工業
 6. 柳澤 吉紀, 理化学研究所
 7. 平山 司,
 ファインセラミックスセンター
 8. 幾原 雄一,
 東京大学、ファインセラミックスセンター

 9. 前田 秀明,
 科学技術振興機構、理化学研究所
 第4部門 



 

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 応募部門  4.顕微鏡関連部門(FIM, APFIM, AFM, X線CT等)
 題目  Cu-0.03wt%P合金の凝固過程におけるデンドライトの再溶融挙動
作品の説明・学術的価値・技術的価値・組織写真の価値・材料名・試料作製法・観察手法・出典 説明文など
 応募者・
 共同研究者 
 1. 小森 康平, 株式会社神戸製鋼所 
 技術開発本部 材料研究所 精錬凝固研究室
 2. 西村 友宏, 株式会社神戸製鋼所 
 技術開発本部 材料研究所 精錬凝固研究室
 3. 堀口 元宏, 株式会社神戸製鋼所 
 技術開発本部 材料研究所 精錬凝固研究室
 4. 安田 秀幸, 京都大学 工学研究科
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