表彰(日本金属学会)

~2021年3月16日(火),下記の方々が本会の賞を受賞されます.おめでとうございます.
今回は賞状の発送をもって,贈呈式に代えさせていただきます.~
受賞者紹介PDFダウンロード

第66回 日本金属学会賞受賞者

大阪大学 特任教授・東北大学 名誉教授 新家 光雄 君


新家光雄君は,金属材料の中でも,特にチタン合金に関し,加工熱処理を駆使したミクロ組織制御と強靭化の研究に邁進し,実際に材料を開発するなど,金属学分野に多大な貢献をして来ている.特に生体用合金では,新合金の開発,製造・加工技術,熱処理・加工熱処理による組織制御と高性能化を行い,さらに実用化に必須の生体組織親和性や細胞毒性などの性能評価にも幅広く成果を挙げている.以上の中で特筆すべき代表的な研究開発成果は,次のようである.
(1) 生体用低弾性率チタン合金の創製
 毒性およびアレルギー性等の生体為害性のない構成元素からなる骨のヤング率に類似した低ヤング率を有し,超弾性機能を発現する骨構造用チタン合金であるβ型Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr(TNTZ)合金をd電子合金設計法により設計・創製している.続いて,TNTZ合金の低弾性率を維持したままでの高力学的生体適合化を冷間強加工を組み入れた加工熱処理による微細構造制御により達成している.本合金の低弾性率の有効性についても,動物実験により,初めて実証に成功している.また,本合金の生体機能化のための表面修飾に関しても多くを報告している.
(2) 生体用ヤング率自己調整機能型β型チタン合金の創製
 脊柱固定器具用ロッド等では,骨吸収の抑制や良好な骨のリモデリングをもたらす全体が低弾性率で,変形後に高い形状維持機能をもたらす変形部のみが高弾性率となるチタン合金が有望で,それを満たすためには,変形部に高弾性率相であるω相が誘起されれば良いと考え,β型Ti-12Cr合金組成を見出し,変形後に15%以上のヤング率の増大に成功している.さらに,Ti-12Cr合金のCr量および酸素量を制御することにより,TWIP(双晶誘起塑性)を発現させ,1,000MPa以上の引張り強度で20%以上の伸びを得ている.
(3) 生体用低コスト低弾性率β型チタン合金の開発
 TNTZを含め,これまでの生体用低弾性率β型チタン合金はNb,Ta,Mo,Zr等の高コスト元素を多量に含有しているため,それらで構成されるインプラントは高額となるため,低コストなインプラントの需要も生じている.このため,資源が豊富で,毒性の低いMnに着目し,生体用低コスト低弾性率β型Ti-Mn合金の開発に成功している.
(4) 歯科精密鋳造用チタン合金の創製と歯科精密鋳造技術の開発
 TNTZは,歯科精密鋳造により,歯科補綴物への適用が可能であるが,融点が一般的なチタン合金と比較すると著しく高いため,生体為害性のない低融点である歯科精密鋳造用チタン合金が望まれている.このため,TNTZ合金から高融点であるTaを排除し,全率型固溶元素であるZrを増加させ,低融点金属で,かつ低コストであるCr,FeやSiを加えた歯科精密用チタン合金を設計開発している.TNTZ合金だけでなく,従来の歯科精密鋳造用チタン合金の融点は高く,チタン合金に適した歯科精密鋳造技術の開発が望まれている.このため,カルシアを用いた高融点鋳型の開発を行い,2層カルシアコーティング法を開発し,この方法により,上記歯科精密鋳造用チタン合金による歯冠を始めとする種々の歯科補綴物の歯科精密鋳造に成功している.
(5) 生体用Co-Cr-Mo合金の高力学的適合化
 ASTM規格生体用Co-28Cr-6Mo(CCM)合金は,高強度であることから,脊柱矯正器具用ロッド等に適用すれば,ロッド径を小さくすること(ロープロファイル化)ができ日本人の体格に適したインプラントとすることが可能である.このためには,CCM合金のさらなる高強度化が望まれる.そこで,CCM合金に強歪加工法である高圧捩じり加工法(HPT)を施した後,短時間時効処理を施し,安定化した超微細γ組織とすることにより,高強度・高延性・高疲労強度化を達成している.
(6) 歯科用低カラット貴金属合金に関する研究
 我が国特有の歯科用低カラット貴金属合金であるAg-Pd-Au-Cu-Zn合金に関して,種々の熱処理を施した場合の疲労特性,機械的性質,摩擦摩耗特性とミクロ組織との関係を明確とし,本合金の熱処理による高力学的機能化へ貢献しているが,特に本合金の特異強化の解明での業績が顕著である.本合金は,溶体化・時候処理により高強度化するが,一定温度範囲からの溶体化のみで著しく高強度化する,いわゆる特異強化が生じる.この現象は,一般の金属材料では,見られない.本合金では,溶体化時に,ナノオーダーのβ’相が析出し,高強度化に寄与することを明確とした.この析出がスピノーダル分解に起因していることを予測している.
 日本金属学会の運営に関しては,会長等多くの重職を務め,Materials Transactions,日本金属学会誌およびまてりあでの特集号,セミナー,シンポジウム等で数多くの主企画担当も務めている.また,チタン世界会議国際組織委員日本代表として2007年に第11回チタン世界会議JIMIC5を京都で開催した.他関係学会である日本バイオマテリアル学会,軽金属学会,日本機械学会,日本鉄鋼協会,TMS(米国)等にても理事・監事・評議委員・委員等を務め日本の金属学の発展のために貢献して来ている.



第62回 日本金属学会技術賞 受賞者 (3名) (2021年3月16日)

(50音順)

[アルミニウム・高熱伝導セラミックス一体型基板の開発]

DOWAパワーデバイス(株) 常務取締役開発部長 小山内 英世 君

受賞者は,金属-セラミックス接合基板の研究者として,製品や材料,製造技術開発に従事してきた.近年は金属-セラミックス基板とベース板を一体化した基板を開発し,新エネルギーや鉄道用パワーモジュールの小型化,高効率化に貢献.さらに放熱フィンまでを一体化した基板の開発に成功し,電気自動車用パワーモジュールの高信頼性,小型化に貢献.工業面のみならず,学術的にも,金属やセラミックス,異種材料の界面科学,接合体の熱サイクル負荷時の変形,鋳造・凝固プロセスなど,重要な課題を解決してきた.

[量子ビームを活用した先進的組織解析技術の開発]

日本製鉄(株)先端技術研究所 上席主幹研究員 谷山 明 君

受賞者は,X線や中性子線,電子線などの量子ビームを活用した先進的な組織解析技術の開発に従事してきた.溶融亜鉛めっき皮膜の合金化挙動や炭素鋼の相変態挙動の解明,電磁鋼板の磁区観察などに動的観察技術を適用し,最近では,相変態や再結晶挙動などを直接観察可能な,高温その場結晶組織解析装置の開発に成功している.これらの研究成果は,金属・鉄鋼材料の組織解析技術の発展のみならず,材料の機能・特性発現メカニズムに基づく製造プロセス提案や商品開発にも貢献するものである.

[ステンレス鋼の製造メタラジーに関する研究開発と実用化]

日鉄ステンレス(株)研究センター シニアフェロー 柘植 信二 君

受賞者は,鉄鋼メーカーの研究者として,極低S化・微量元素制御によるラインパイプ用二相系ステンレス鋼の熱間加工性改善,高純度フェライト系ステンレス鋼へのオキサイドメタラジー活用による鋳片の凝固組織微細化を通じた薄鋼板の加工特性向上,Mo,Ni含有量を節減した省資源型二相系ステンレス鋼の鋼種開発と厚板および薄板製品への実用化等の実績を挙げてきた.ステンレス製品の製造コスト低減,機能向上,レアメタル使用量削減に向けた研究成果は学術的にも工業的にも価値の高い優れたものである.



第71回 日本金属学会金属組織写真賞 受賞者 (2021年3月16日)

最優秀賞 1件(15名)

【第3部門】透過電子顕微鏡部門

「Al-Zn-Mg-Cu合金における結晶粒界無析出物帯中の溶質クラスタ」

富山大学学術研究部 教授 松田 健二 君
富山大学大学院材料機能工学専攻修士課程(現三菱アルミニウム(株)) 安元 透 君
富山大学大学院ナノ新機能物質科学専攻博士課程 Bendo Artenis 君
富山大学学術研究部 助教 土屋 大樹 君
富山大学学術研究部 准教授 李 昇原 君
富山大学学術研究部 教授 西村 克彦 君
富山大学学術研究部 教授 布村 紀男 君
SINTEF材料ナノテクノロジー部門 主任研究員 Marioara Calin 君
NTNU大学院物理学専攻博士後期課程 Lervik Adrian 君
NTNU大学院自然科学部 教授 Holmestad Randi 君
九州大学工学研究院機械工学部門 教授 戸田 裕之 君
日本原子力研究開発機構システム計算科学センター 研究主幹 山口 正剛 君
北海道大学工学研究院材料科学部門 准教授 池田 賢一 君
長岡技術科学大学機械創造工学専攻 准教授 本間 智之 君
富山大学名誉教授 池野 進 君

優秀賞 2件(13名)

【第2部門】走査電子顕微鏡部門

「入射電子エネルギー1eVでのSEM観察による複相鋼組織の分離可視化」

JFEスチール(株)スチール研究所 主任研究員 青山 朋弘 君
JFEスチール(株)スチール研究所 主任研究員(現 ISI of the Czech Academy of Science, Electron Microscopy Dept. Group Leader) 
Šárka Mikmeková 君

【第3部門】透過電子顕微鏡部門

「高精度位相シフト電子線ホログラフィーによるn型GaNのドーパント濃度分布」

ファインセラミックスセンターナノ構造研究所 主席研究員 山本 和生 君
ファインセラミックスセンターナノ構造研究所 仲野 靖孝 君
ファインセラミックスセンターナノ構造研究所 松本 実子 君
ファインセラミックスセンターナノ構造研究所 上級研究員 穴田 智史 君
ファインセラミックスセンターナノ構造研究所 主席研究員 石川 由加里 君
ファインセラミックスセンターナノ構造研究所 副所長 平山 司 君
名古屋大学未来材料システム研究所 特任准教授 田中 敦之 君
名古屋大学未来材料システム研究所 准教授 本田 善央 君
名古屋大学工学研究科電子工学専攻 博士後期課程 安藤 悠人 君
名古屋大学工学研究科電子工学専攻 博士前期課程 小倉 昌也 君
名古屋大学未来材料システム研究所 教授 天野 浩 君



第52回 日本金属学会研究技術功労賞 受賞者(10名)(2021年3月16日)

(50音順)

東北大学工学部・工学研究科技術部 助手 赤尾 昇 君

受賞者は,1990年の奉職以来,共通実験施設の薄膜作製・表面分析装置の維持・管理および運用を行い,合金薄膜や化合物複合被覆プロセス開発に貢献するとともに,多くの学生・研究者の材料分析支援を行った.特に,X線光電子分光法による自己修復性防食機能を有する金属・酸化物薄膜の機能発現評価に成果をあげた.また,分析装置間のデータ比較が可能なソフトウエアを自主開発するなど,研究者が求める材料表面組成・状態分析技術の高度化に取り組み続けており,学術研究の進展に貢献した功績は顕著である.


日鉄ステンレス(株)研究センター 東方 和之 君

受賞者は,入社以来38年間にわたりステンレス鋼の物理分析および腐食試験に従事し,高加工性フェライト系ステンレス鋼や省合金2相ステンレス鋼等,数多くの新商品開発および実用化に大きく貢献してきた.例として,X線回折装置を用いた集合組織測定における独自の試料調整技術の開発,電子線マイクロアナライザーにおける窒素分析精度の向上,棒鋼試料に対する定荷重応力腐食試験方法の確立等が挙げられる.また,部下・後輩への指導・育成にも熱心に取り組み,ステンレス鋼の発展への功績は顕著である.


パルステック工業㈱技術部 主席 伊藤 晴久 君

受賞者は,入社以来34年にわたり,大容量光ディスク検査装置とcosα法による携帯型迅速X線応力測定装置の動作に必須のソフトウェア設計・製作を,卓越した創意工夫で推進してきた.100GB級大容量光ディスク装置では独自の検査アルゴリズムが業界標準に認定され,携帯型X線応力測定装置では光ディスク信号処理の経験から現場作業性に優れたソフトウェア開発に貢献した.これらは材料物性や計算状態図などのデータベース構築,品質管理などに必須で,鉄鋼・非鉄材料分野の材料科学発展に顕著な功績が認められる.


造幣局研究所研究開発課 作業長 植田 晃之 君

受賞者は,入局以来38年間,貨幣製造工程の一つである圧延及び成形作業に従事後,研究開発部門に在籍し,貨幣等への微細加工に関する研究開発などを行い,例として,マシニングセンタによる貨幣用金型への加工技術について,CAD/CAMシステムの導入,開発,実用化に至るまで長きにわたって貢献を続けてきた.新たなマシニングセンタによる微細加工技術は,潜像技術など貨幣に対する国民の信頼維持には欠かせない偽造防止技術の高度化に寄与するなど,貨幣製造に関する研究開発及び社会貢献への功績は顕著である.


福井工業大学 センター管理課 永見 順一 君

受賞者は,11年間企業で培った高度の金属加工技術を基に,21年間,学生への技術教育や研究用実験装置の製作などで貢献してきた.日々の学生指導における優しい人柄から,親しみを感じる学生,教職員が多いだけでなく,技能検定に挑戦する学生に対しては熱意ある指導を行い,毎年合格者を排出する優れた指導力も有している.また,製作された研究用実験装置の機能・性能は製作依頼者の期待を上回ることも多い.以上のように,研究開発の為の基盤形成・発展に果たした役割は,非常に大きく,その功績は顕著である.


日鉄テクノロジー(株)尼崎事業所材料評価部 専門主幹 星野 信也 君

受賞者は,入社以来35年間にわたり,耐候性材料の評価ならびに耐食性改善の研究開発支援業務に従事してきた.屋外暴露をはじめ長期にわたる耐食性の試験評価の中で,安定して信頼性の高いデータを提供することに優れた能力を発揮し,表面処理鋼板の研究開発に大きく貢献した.さらに,若手の技能系社員や技術者の育成にも力を注ぎ,研究環境整備と体制構築に大きな貢献を果たした.これらは,耐食材料開発の陰の功労者として高く評価される功績である.


日本製鉄(株)技術開発本部 係長 星野 剛吏 君

受賞者は,入社以来39年間にわたり,油井管,ラインパイプ等の鋼管材料の研究開発の支援業務に従事してきた.特に,高温・高圧の硫化水素環境のような過酷な腐食環境用の材料開発のため,実環境を模擬した数々の難度の高い腐食試験技術を確立し,多くの高性能鋼管の実用化を支えてきた.その試験技術は業界の標準試験法制定に貢献したものもあり,社外からの評価も高い.試験職場の指導者として人材育成にも大きく貢献しており,その多岐にわたる研究開発への功績は顕著である.


大同特殊鋼(株)技術開発研究所 松尾 一成 君

受賞者は,入社以来40年間にわたり,星崎工場製造部門に加え,研究開発部門にて塑性加工技術に関する研究開発の試作業務に従事してきた.特に,高合金材料の温間高速鍛造技術の基礎研究や実機を模擬した温熱間鍛造金型の損傷試験を再現性高く運用するため鍛造設備の安全性担保や改良に尽力し,温熱間鍛造金型損傷メカニズムの解明につなげた功績が挙げられる.現在も現場で培った経験や技能を駆使し,研究所全体の安全活動に携わっており,その多岐にわたる研究開発への貢献と功績は顕著である.


旭川工業高等専門学校技術創造部 技術職員 三田村 均 君

受賞者は,本校採用以来CNCフライス盤等を用いた高い工作技術により,多くの教員研究に大変大きく貢献してきた人物である.加えて,科学研究費奨励研究として採択された“女子にも優しい鋳もの作り応援装置の開発と技法研究”,および“明るい老後を過ごすためのお年寄りに優しい「畑作業のお助け機械」の試作”,あるいは学生向けの学習教材として,缶の高さや材質の違いにより流すレーンを適切に制御する飲料缶用コンベアラインの作成にも取り組んでおり,地域社会や学生教育への貢献も顕著である.


東京大学生産技術研究所物質環境系部門 技術専門員 簗場 豊 君

受賞者は,奉職以来30年に渡って教員の研究教育活動を技術的に支援し,大学院生への技術指導,また,共同して実験研究を行ってきた.例として,硬質・脆性材料の破壊靭性の新たな評価方法を考案し,成果として主著論文15編を上梓した.
 また,各種分析機器の操作や技術支援に貢献してきた.特に,固体核磁気共鳴装置の管理者として,大学院生や教員へ操作指導,測定法の改良や構造解析に携わり,非晶質酸化物等を対象に29編の共著論文となるなど,材料科学における研究教育への貢献は顕著である.



第79回 日本金属学会功績賞 受賞者(6名) (2021年3月16日)

(部門別50音順)

[学術部門]

[酸化物が示す機能の微視的起源に関する研究]

九州大学大学院工学研究院 准教授 佐藤 幸生 君

受賞者は,酸化物が示す機能の微視的起源に関する研究を行ってきた.代表的な成果として,酸化亜鉛セラミックスの結晶粒界における非線形電流―電圧特性発現メカニズムの解明,圧電体単結晶における強誘電ナノドメイン電場応答のリアルタイム直接観察,電場印加その場電子顕微鏡法の確立・高度化ならびにその応用などがある.これらの成果は機能性セラミックスの特性発現メカニズム解明ならびに新材料開発に大きく資するものとして国内外から高く評価されており,今後の更なる発展が期待される.


[鉄鋼材料の相変態と破壊挙動に関する研究]

物質・材料研究機構構造材料研究拠点 グループリーダー 柴田 曉伸 君

受賞者は,鉄鋼材料のミクロ組織と破壊挙動に関する基礎研究を継続的に行ってきた.特に,マルテンサイト変態などの相変態におけるミクロ組織形成機構を電子顕微鏡や中性子回折を駆使して明らかにしている.最近では,組織学的な視点からのき裂伝播挙動を破壊力学と関連付けるような新たな研究を行っており,マルテンサイト鋼における水素脆性破壊の結晶学的特徴やき裂伝播挙動と破壊特性の相関を解明している.これらの成果は鉄鋼材料研究の発展に大きく貢献しており,今後の幅広い研究展開が期待される.


[鉄鋼材料の強靭化を目指した組織と力学特性に関する研究]

東京工業大学物質理工学院 准教授 中田 伸生 君

受賞者は,一貫して鉄鋼材料の組織と力学特性に関する研究に従事している.合金設計と加工熱処理による組織制御を得意としながら,転位論やマイクロメカニクスにも通じており,次の課題において大きな研究業績を残している.bcc-fcc逆変態の熱力学と速度論,複合組織の不均一変形,組織形成と力学特性に及ぼす内部応力の効果.これらの成果は,鉄鋼材料の強靭化を探求する基礎的なものであり,その遂行は材料科学だけでなく,産業界が必要とする工学分野にも大きく貢献するものである.


[金属合金の凝固・変形のその場観察を利用した溶接・鋳造欠陥形成機構の解明]

物質・材料研究機構構造材料研究拠点 主幹研究員 柳樂 知也 君

受賞者は,高輝度X線を利用した金属合金の凝固現象,固液共存体の変形挙動のその場観察手法を開発し,結晶成長・相変態などの組織形成機構や固液共存体の変形時に生じる凝固割れの形成機構の解明に取り組んできた.近年では溶接・接合現象へと研究を展開し,高輝度X線を利用したアーク溶接での凝固割れの発生・伝播機構や固相接合中での組織形成機構の解明など独自性の高い優れた研究成果を挙げつつある.今後も先駆的な研究手法により溶接・接合分野においてさらなる研究の発展と活躍が期待される.


[交差相関効果の制御による磁気機能性材料の開発]

大阪大学大学院工学研究科 准教授 藤枝 俊 君

受賞者は,磁性と熱量もしくは弾性との交差相関効果を磁気機能性材料の開発に取り入れた.具体的には,鉄基化合物の遍歴電子メタ磁性転移に伴う巨大磁気熱量効果を制御して,応用上注目される磁気冷凍用材料を開発した.また,同化合物のメタ磁性転移に伴う大きな等方体積磁歪に着目して,従来材料に必須の結晶方位制御が不要の巨大磁歪材料として有望であることも示した.さらに,最近では鉄基合金の逆磁歪効果の振動発電への応用に取り組み,優れた発電特性の実証およびその発現機構の解明に成功しており,上記材料分野でさらなる活躍が期待される.


[技術部門]

[極限環境下での使用に耐えうる新規材料の技術開発]

大同特殊鋼(株)技術開発研究所耐食・耐熱材料研究室 室長 小柳 禎彦 君

受賞者は,金属材料の極限性能が要求される分野に関する研究開発に従事し,これまでにNi合金,TiAl合金,Ti合金などで微細組織制御を基軸とした材料設計やプロセス改善により,数多くの製品開発に成功してきた.特に,Ni合金では特異組織を有するNi-Cr-Al合金の組織形成過程を詳細に調査し,従来のNi合金とは異なる強化機構を解明した.また,TiAl合金やTi合金については材料の基盤研究だけでなく製造技術の発展にも貢献するなど,学術的な視点だけでなく工業的な製造技術の発展まで幅広い分野で貢献した.



第60回 日本金属学会 谷川・ハリス賞 受賞者(2名) (2021年3月16日)

(50音順)

[LPSO型マグネシウム合金に関する研究]

熊本大学 先進マグネシウム国際研究センター センター長 河村 能人 君

受賞者は,高強度と高耐熱性と難燃性を有する画期的なLPSO型(長周期積層構造型)マグネシウム合金を開発し,シンクロ型LPSO構造という新奇な原子配列構造とキンク強化という新しい材料強化機構を発見するとともに,LPSO型マグネシウム合金の溶解・精製技術,鋳造技術,塑性加工技術,接合技術などの工業的に重要なモノづくり技術を開発して,マグネシウム合金に関する構造材料分野の学術および工業技術の発展に貢献した.


[軽量構造材料の変形挙動に関する研究]

東北大学大学院工学研究科 教授 小池 淳一 君

受賞者は,軽量構造材料の変形・破壊機構の研究に従事し,従来の理解を覆す成果を次々に発表してきた.特に,マグネシウム合金多結晶材料において,強い塑性異方性によって発生する粒界での集中応力・ひずみに着目し,新たな変形・破壊機構を見出して当該分野の学術的発展に貢献した.また,チタン合金やアルミニウム合金の超塑性変形において変形誘起による相変化や粒界における融解現象を見出すなど新規かつ重要な知見を明らかにし,学術的にも工業技術的にもその貢献は大きい.



第27回 日本金属学会増本量賞 受賞者(1名) (2021年3月16日)

[機能性材料としての骨微細構造配向化機構の解明とそれに基づく骨金属インプラントに関する研究]

大阪大学大学院工学研究科 教授 中野 貴由 君

受賞者は,生体骨の多様な機能発現を結晶配向性等の金属学を基軸に解明し,先駆的な成果を挙げ,学際領域における異方性骨材料学を構築した.骨微細構造配向性を骨質指標に,骨再生や骨疾患形成機序の解明,創薬支援等を可能とし,骨系細胞・遺伝子レベルでの配向核形成因子の発見,配向化機構解明,配向化制御法を樹立,歯科・股関節・脊椎金属インプラントの臨床応用をも実現した.一連の成果はスカラーからベクトル・テンソルへと骨医療を根底から変革するものであり,世界的に高く評価されている.



日本金属学会名誉員推戴者(2名) (2021年3月16日)

(50音順)

岩谷産業(株)中央研究所 技術顧問・大阪大学 名誉教授 
中嶋 英雄 君


中嶋英雄君は,1977年東北大学大学院工学研究科博士課程修了後,米国レンスレア工科大学博士研究員,東北大学金属材料研究所助手,助教授,岩手大学工学部教授を経て1996年大阪大学産業科学研究所教授に就任した.2012年に退職後,(公財)若狭湾エネルギー研究センター所長に,2019年に岩谷産業(株)中央研究所技術顧問に就任し,現在に至っている.この間,日本学術会議第22~23期会員・材料工学将来展開分科会委員長,日本金属学会主催ポーラス金属・発泡金属国際会議(JIMIC-4)組織委員長などを歴任し,材料工学の発展に貢献した.
 主な研究業績は,金属および化合物における拡散,ロータス型ポーラス金属の製法,物性および応用開発,人工超格子・ナノ中空球の作製などの基礎物性から材料開発に至る幅広い分野において多数の先駆的研究を行ったことである.
 浮遊帯溶融法を用いて従来育成の困難であった大きなチタンの単結晶を作製し,チタン中での遷移金属原子の高速拡散機構を明らかにした.また,L12型およびL10型金属間化合物や準結晶における拡散機構を世界に先んじて解明した.
 ガス雰囲気下の溶解凝固法でロータス金属を開発し,連続鋳造法によってロータス金属の低コスト・量産化を実現し工業化への道を拓いた.ロータス金属の特異な機械的性質,衝撃エネルギー吸収特性,吸音性,熱伝導度などの発現機構を解明し,ポーラス材料学の確立に貢献した.さらにロータス金属を用いた高性能ヒートシンクを開発することに成功し,応用の道を開きつつある.国外でも強い関心がもたれ,ロータス金属の基礎,応用研究が展開されるに至っている.
 これらの研究業績に対して本会においては学会賞,増本量賞,村上記念賞,功績賞,谷川・ハリス賞,論文賞,学術功労賞,ジェフリース賞などを受賞し,また日本金属学会副会長を務め,本会の発展のために大いに貢献した.


東北大学 名誉教授 丸山 公一 君


丸山公一君は,1976年に東北大学大学院博士課程を単位取得退学後,同年東北大学助手に採用され,1993年教授に就任し,2013年には東北大学名誉教授となった.
 この間,主として高温構造材料に関する研究や人材育成に従事してきた.TiAl合金は有望な軽量高温材料であり,その高強度化には?相層状組織の最適化が不可欠である.同君らは,系統的な実験研究に基づいて,TiAl合金層状組織の設計および安定化指針を提案し,TiAl合金の高温強度向上に貢献した.耐熱Mg合金は,自動車等の軽量化をとおして地球環境問題に貢献できる魅力ある材料である.ただし,高温強度の向上と延性改善に課題がある.同君らは,耐熱Mg合金の材料設計の基本的考え方,粒界すべりの寄与による延性の向上などを提案し,耐熱Mg合金の発展に寄与した.10万時間を超える長期に渡って使用する高温構造材料では,短時間の試験結果を外挿して長時間性能を高精度評価する手法の確立が不可欠である.同君らは,高温材料の破壊に至る組織損傷プロセスに立脚した長時間強度評価法を提案し,耐熱鋼の長時間強度の高精度評価を可能にした.最近も同君は,10万時間を超える時間域での耐熱鋼の強度特性評価に関する学術論文の執筆を続けている.
 同君は,教科書「高温強度の材料科学-クリープ理論と実用材料への適用」や「金属便覧」,「鉄鋼便覧」,「Creep resistant steels」などの本での高温クリープ変形・破壊に関する節の執筆をとおして,高温材料の研究者や技術者の育成にも貢献した.また,JIMICやJIMISなど,本会が主催する国際会議の運営をとおして,本会の国際活動も支援した.
 これらの業績に対し,本会より谷川ハリス賞,増本量賞,功労賞,村上記念賞などが授与されている.同君は,日本金属学会副会長,理事として,本会の発展にも尽力した.



第4回 日本金属学会フェロー認定者 (2名) (2021年3月16日)

(50音順)

 東北大学マイクロシステム融合研究開発センター 教授 鈴木 茂 君
 九州大学名誉教授 東田 賢二 君



第29回 日本金属学会・日本鉄鋼協会 奨学賞 受賞者 47名(2021年3月)

(50音順)

室蘭工業大学 工学部 荒木 勇磨 君

芝浦工業大学 工学部 石原 奨 君

東北大学 工学部 岩下 翔太 君

富山大学 工学部 岡田 真悟 君

九州大学 工学部 小川 大樹 君

早稲田大学 基幹理工学部 加藤 慎一 君

九州大学 工学部 川津 孝介 君

金沢工業大学 工学部 北村 鈴香 君

名古屋大学 工学部 熊谷 風雅 君

京都大学 工学部 黒岩 省吾 君

群馬大学 理工学部 小坂 豪志 君

千葉工業大学 工学部 駒澤 雄飛 君

島根大学 総合理工学部 小宅 雄真 君

大阪大学 工学部 齋藤 悠宇 君

秋田大学 理工学部 齋藤 佑樹 君

仙台高等専門学校 専攻科 佐藤 優斗 君

京都大学 工学部 塩谷 太基 君

長崎大学 工学部 清水 裕紀 君

兵庫県立大学 工学部 鈴木 雄裕 君

東京工業大学 物質理工学院 高橋 あまね 君

名古屋工業大学 工学部 武井 悠朔 君

金沢大学 理工学域 竹中 崇一郎 君

豊橋技術科学大学 工学部 田﨑 陽斗 君

東京大学 工学部 谷 和樹 君

近畿大学 理工学部 谷川 慎太郎 君

長岡技術科学大学 工学部 豊場 亮太 君

鈴鹿工業高等専門学校 専攻科 中川 遼一 君

東京大学 工学部 長原 颯大 君

愛媛大学 工学部 難波 絃 君

北海道大学 工学部 西 侃 君

東海大学 工学部 西脇 圭亮 君

大阪大学 工学部 能勢 和史 君

北海道大学 工学部 橋本 明賢 君

名古屋大学 工学部 浜島 明宏 君

九州工業大学 工学部 林 亮佑 君

茨城大学 工学部 星 翔太 君

大阪府立大学 工学域 真下 理彩 君

熊本大学 工学部 増永 隆佑 君

東北大学 工学部 松尾 直樹 君

岩手大学 理工学部 松川 奈愛 君

横浜国立大学 理工学部 宮下 大輝 君

茨城大学 工学部 山川 海斗 君

香川大学 工学部 吉岡 遼太 君

関西大学 化学生命工学部 吉田 湧太 君

東京理科大学 基礎工学部 吉成 朝子 君

東京工業大学 物質理工学院 劉 宇星 君

東北大学 工学部 渡邊 直樹 君



▲ TOP