会 長 就 任 の ご 挨 拶

公益社団法人 日本金属学会 第68代会長 乾  晴 行

このたび皆様方のご推挙により日本金属学会の会長に就任することになりました.大変光栄に存じます.本会の重厚な歴史と光り輝く実績を考えますと,責任の重大さを痛感するとともに,身の引きしまる思いであります.本会副会長の蔡安邦博士,中野貴由博士,御手洗容子博士をはじめとして,理事各位,代議員各位,委員各位,常設8支部の支部長および支部構成員各位,すなわち会員の皆様ならびに山村英明事務局長および事務局の皆様の力をお借りして,金属材料分野の発展のために微力ながら全力を尽す所存であります.皆様方の倍旧のご支援とご鞭撻を賜りますよう宜しくお願い申し上げます.

日本金属学会は,「金属に関する理論ならびに工業の進歩発達をはかること」を目的として,1937年に「金属之密林の大いなる開拓者」本多光太郎先生のご提唱により創設されました.その後,急速なグローバリゼーションと多様性が進展する社会に対応すべく,近年では,社会基盤材料のみならずエネルギー材料,エコマテリアル,電子・情報材料,生体・福祉材料にわたる先端材料の創製と機能発現機構の探求など,幅広い材料科学・材料工学の研究成果発信の場として発展してきました.したがいまして,その将来においても本会が材料系学協会の中でリーダーシップを発揮するとともに,材料分野の重要性と材料研究者・技術者の存在感を世界にアピールする学会として発展するように努力して参りたいと思っております.

公益社団法人移行5年目に当たる一昨年,中島英治元会長のリーダーシップのもと,本会の目指すべき具体的な学会像を示す本会のビジョンが策定されました.杉本諭前会長のもと,昨年からこのビジョンの実現に向けた具体的なアクションが実行され始めています.本年も引き続きビジョンの実現に向けた具体的なアクションを実行していきたいと考え,以下のような方針をお示しして,会員皆様のご理解とご協力をお願いしたいと存じます.

1.財政基盤の安定化
 公益法人移行に際して,会員資格としての維持員制度を廃止したことにより,産業界の方々の本会での活動が激減し,財政悪化の原因の一つとなった経験があります.福富洋志元会長のもと,新たな維持員制度を設置し,産業界から理事が選出されるような運営体制の変更も行って,財政基盤の安定化を図るとともに,産業界のご意見が反映されるようにしました.維持員数の更なる増加は,財政基盤の安定化と産業界の方々の本会での活動の活発化の好循環を生み出すものと期待され,本年もこの方針をもとに継続して取り組んでいきます.

2. 会員数の増強
 近年における本会の会員数の減少は,わが国における労働人口の減少率よりも大きく,本会の会員の年齢構成を見ても35歳以下の正会員数が他の年代の正会員数と比較すると極めて少なく,将来に渡る本会の継続的かつ活発な活動に支障を来たすことが危惧されます.この対策として,一昨年,学生会員の会費を大幅に減じ,卒業・修了後も一定期間,同額で本会正会員としての活動が継続できる体制を導入いたしました.このような施策による若手正会員数の増加や先述の維持員数の増加により,会員数増強に努めてまいります.しかし,会員数増加のための何よりの策は,「日本金属学会に行けば材料科学のすべてが知れる」と言われるように会員・非会員のニーズに的確に答え,本会の評価を高めることです.今後,長期的研究分野の開拓を視野に入れた材料戦略の策定や,後述する事業を通じて本会を魅力ある学会にしていくための策を講じていきます.

3. 講演会・講習会事業の拡充
 本会の講演大会では,会員数の割合に比べ企業からの講演大会参加者は少なく,さらに企業からの講演は極端に少ないのが現状であります.維持員の増加により企業の研究者・技術者の講演大会参加者数増加を図りつつ,立場の異なる多様な研究者・技術者にとっても魅力ある講演大会となるよう,金属材料の生産技術から金属物性まで議論できるセッション構成の改編に更に取り組んでいく所存です.また,この目的を達成するための講演大会のあり方そのものにもついても議論を開始したいと考えております.材料研究の多様化・細分化が進んでいることを考えれば,他の学協会とも連携を深めていくことは重要です.日本鉄鋼協会,自動車技術会をはじめ他の学協会との有機的な連携の模索も開始したいと考えております.
 講習会では,本会フェローの皆様にも講師などでご協力いただき,若手研究者・技術者の啓発・人材育成や将来の会員を見越して中・高校生などを対象とした啓蒙など有益な講習会を企画し,学会の活性化に貢献していきます.

4. 調査・研究事業の拡充
 未来を先導する領域を開拓し,世界の材料科学・工学をリードする学会となるためには,若手研究者を含めて本会の将来の更なる発展に向けた戦略を練っていく必要があります.このため,中島英治元会長,杉本諭前会長時代に各分科会への活動支援,若手研究会設立支援などの施策が開始されました.また,本年からは若手研究者の育成を目的として,研究助成事業が開始されます.本年はこれらの支援を継続するとともに,理数探求などの学校教育の支援,青少年向けイベントの開催など人材育成に関する事業を拡充していきます.

5. 刊行事業
 会報,会誌,欧文誌の発行は,学会活動の根幹を成すものです.これらの発刊は,今後も会員サービスの根幹として維持してゆく必要がありますが,Materials Transactions 誌のインパクトファクターが近年,低い値のまま推移しています.昨年から専任の編集長に就任いただき,編集委員会で共同刊行事業も含めてさまざまな対策を講じていきますが,本会の情報発信力を将来にわたって維持するためには,会員各位からの良質な論文の投稿が不可欠です.ご協力を切にお願いいたします.

6. 表彰・奨励事業と支部活動
 本会の表彰・奨励事業は,会員の皆様の研究活動の意欲を高めるとともに,人材の育成にも欠かすことのできないものです.各賞の授賞目的と対象を整理しつつ,特に若手を対象とした賞の拡充を推進してまいります.また,支部活動も本会の活性化に不可欠です.先に挙げたフェローの皆様の御協力などを得て,支部活動の支援に努めていきたいと考えています.

以上のように,本会の活動を活発化し,材料科学・材料工学の中心的学会として我が国ならびに世界の材料研究の高度化に貢献できるよう努力して参ります.会員各位ならびに事務局さらには各支部の皆様のご理解,ご協力,ご鞭撻を何卒,宜しくお願い申し上げます.

2019年4月23日