2013年秋期講演大会公募シンポジウムテーマ要旨

 秋期講演大会(金沢大学)におけるテーマ公募によるシンポジウム講演は,下記 5 テーマで実施することになりました.
 講演申込要領は前記のとおりです.多数の有益な講演と活発な討論を期待いたします.

S1   水素誘起超多量空孔
Hydrogen-induced superabundant vacancies

 水素誘起超多量空孔(SAV)生成は,水素を固溶した金属中で原子空孔の熱平衡濃度が飛躍的に(数桁以上)増加する現象で,深井らが発見してからちょうど20年になる.その機構は空孔が水素をトラップすることで生成エネルギーが低下するという単純なもので,その一般性ゆえに金属の性質に極めて広範な影響をもたらすことが次第に明らかにされつつある.SAV がもたらす効果として,金属原子の拡散過程(特に低温領域)の促進および空孔-水素複合欠陥をもとにした空孔クラスターの形成促進がある.それらは金属めっき膜の室温再結晶,金属の水素脆化や応力腐食割れ,核融合炉の脆化などに重要な役割を果たしていることが示され,工業的にもその挙動解明が求められている.近年,原子空孔分析や水素分析の手法も大きく発展し,第一原理計算などによる空孔-水素の構造決定法も進化していることから単なる現象論から原子論を基礎とした機構解明へのブレイクスルーが期待される.本シンポジウムを通して,材料特性と構造解析との意見交換を通じて,新規な研究展開を促進することを狙うものである.

 テーマ責任者
 (シンポジウム chair):
   千葉大学大学院工学研究科教授 藤浪真紀
   E-mail: fujinami@faculty.chiba-u.jp
 (シンポジウム co-chairs):
   大阪府立大 沼倉 宏 島根大 荒河一渡 九大 大沢一人
   中央大 杉本秀彦 兵庫県立大 福室直樹

S2   バルクナノメタル(III)
Bulk Nanometal (III)

 母相の平均粒径が 1 μm よりも小さい超微細粒組織やナノ結晶組織が,バルク体金属においても実現できるようになっている.いま,マトリクスを構成する結晶粒や相が 1 μm 以下のサイズを有する均一なバルク状金属系材料を,「バルクナノメタル(Bulk Nanostructured Metals)」と定義する.バルクナノメタルの特異な機械的性質やその他の特性について,世界的に極めて活発な研究が行われており,我が国においても科学研究費・新学術領域プロジェクト「バルクナノメタル ―常識を覆す新しい構造材料の科学」が採択され,活発な研究活動が行われている.こうした活発な研究活動を背景に,バルクナノメタルが示す特異な組織・構造と特性に関する最新の研究成果を集め,討論することを目的として本公募シンポジウムを企画する.バルクナノメタルの組織と力学特性のみならず,種々の興味深い機能特性に関する研究発表も歓迎する.上記プロジェクト内外から,実験研究および理論・計算シミュレーション研究に関する最新の講演が集まることを期待している.すでに 2 回の公募シンポジウムを,2011年秋・沖縄大会および2012年秋・愛媛大会において実施し,上記プロジェクト内外から多数の講演を集め,活発な討論が行われた.

 テーマ責任者
 (シンポジウム chair):
   京都大学大学院工学研究科教授 辻 伸泰
   E-mail: nobuhiro-tsuji@mtl.kyoto-u.ac.jp
 (シンポジウム co-chairs):
   阪大 尾方成信 九大 堀田善治 東大 柳本 潤
   東工大 加藤雅治 金沢大 下川智嗣

S3   金属間化合物材料の新たな可能性
New Perspectives in Structural and Functional Intermetallics Alloys

 本シンポジウムは,2002年秋期大会以来12年連続の企画である.TiAl,遷移金属シリサイドといった高温構造材料としての金属間化合物ならびに形状記憶合金,熱電変換材料といった機能性金属間化合物は,用途は異なるものの,その力学特性ならびに機能特性は,化合物特有の規則原子配列,相安定性,格子欠陥といった共通の因子に支配されている.このような特性と組織の相関は,原子直視電子顕微鏡法や計算材料科学の発展によって近年急速に理解が深まり,金属間化合物の研究に新たな展開が生まれている.本シンポジウムは,構造用化合物ならびに機能性化合物およびそのキャラクタリゼーション,計算機シミュレーションに関して広く講演を募り,大学,企業,研究所の研究者の活発な議論の場を提供するとともに,これら研究者の有機的連携を促進することを目的としている.特に本年度は,シンポジウム内ミニシンポジウム「相平衡と状態図研究の最先端-第一原理計算から実験まで」や基調講演をもとに議論を深める予定である.

 テーマ責任者
 (シンポジウム chair):
   京都大学大学院工学研究科教授 乾 晴行
   E-mail: haruyuki-inui@mtl.kyoto-u.ac.jp
 (シンポジウム co-chairs):
   東工大 竹山雅夫 北大 三浦誠司 東北大 吉見享祐
   阪大 安田弘行 東工大 木村好里

S4   励起反応場で創成した低次元ナノ材料とその機能(10)
Low-dimensional nanomaterials and their functions grown in the physically/chemically excited reaction fields (ser. 10)

 新機能デバイス要素を目指したナノ材料研究が隆盛を極める中,物理・化学的励起反応場を用いると自己組織化機構から逸脱すると思われる機構により形成された低次元ナノ材料が報告され始めた.その反応場では様々な励起源によって原子・分子規模の非平衡反応を促進させ,主としてボトムアップ的成長と操作が可能となる.本シンポジウムでは励起反応場を用いて創成される各種低次元材料を概括してその形成機構と制御の可能性に関する考察を行い,これらの特異的な物理・化学的諸特性と応用の可能性を学際的に議論する.対象とする励起反応場は,物理的には電子線・イオン・レーザー・超音波・マイクロ波などのビーム照射,化学的には超臨界などの高温・高圧条件やサイズ・次元が規制された空間での化学反応とし,形状にナノメートル規模の粒子・ドット・チューブ・ロッド・ファイバー・板状箔などの低次元構造を持つ金属・半導体・無機化合物・有機化合物・それらの複合体を網羅する.

 テーマ責任者
 (シンポジウム chair):
   東北大学多元物質科学研究所教授 田中俊一郎
   E-mail: sitanaka@tagen.tohoku.ac.jp
 (シンポジウム co-chairs):
   東北大 佐藤俊一 阪大 保田英洋 東北大 柴田浩幸

S5   水素エネルギー材料―V
Hydrogen Energy Materials–V

 地球環境・温暖化問題に加えてエネルギーセキュリティー確保の視点から,水素エネルギーの普及・導入が強く求められている.そのためには,水素の製造・貯蔵・輸送・利用に関する技術開発が不可欠である.とくに水素の安全かつ効率的な貯蔵・輸送に寄与するための材料科学的課題に関しては,これまで開催されてきた公募シンポジウム「水素エネルギー材料(I〜IV)」で幅広く議論されてきた.今回提案するシンポジウムでは,前回に引き続き「エネルギーとしての水素」および「材料開発・機能設計のための水素」に関連する様々な材料について,基礎と応用の両面から活発な討論を行いたい.材料合成・構造解析技術や計算科学など本会における高い研究ポテンシャルをもつ研究者が密に情報交換することにより,水素エネルギーに関連する材料科学の深化とともに,新たな材料科学の萌芽も期待される.

 テーマ責任者
 (シンポジウム chair):
   産業技術総合研究所グループ長 中村優美子
   E-mail: yumiko.nakamura@aist.go.jp
 (シンポジウム co-chairs):
   東北大 折茂慎一 広島大 市川貴之 東北大 亀川厚則
   滋賀県立大 宮村弘 金沢大 石川和宏


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