会 長 就 任 の ご 挨 拶

公益社団法人 日本金属学会第67代会長 杉 本  諭

このたび皆様方のご推挙により日本金属学会の会長に就任することになりました.大変光栄に存じます.一方で,本会の重厚な歴史と伝統,さらには光り輝く実績を考えますと,責任の重大さを痛感するとともに身の引きしまる思いです.本会副会長である細田秀樹博士,中野貴由博士,蔡安邦博士をはじめとして,理事,代議員,委員,支部および会員ならびに山村英明事務局長および事務局の皆様のお力をお借りし,金属およびその関連材料の学術および科学技術の振興のために微力ながら全力を尽す所存です.皆様方のご支援とご鞭撻を,どうぞ宜しくお願い申し上げます.

日本金属学会は,「金属に関する理論ならびに工業の進歩発達をはかること」を目的として,1937年に「金属之密林の大いなる開拓者」本多光太郎先生のご提唱により創設されました.その後,急速なグローバリゼーションと多様性が進展する社会に対応し,近年では社会基盤材料のみならずエネルギー材料,エコマテリアル,電子・情報材料,生体・福祉材料に亘る先端材料の創製と機能発現機構の探求など,幅広い材料科学・材料工学の研究成果発信の場として貢献してきました.したがって,その将来においても本会が,基盤材料から先端材料までを対象として材料系学協会の中でもリーダーシップを発揮し,さらに材料分野の重要性と材料研究者・技術者の存在感を世界にアピールしていく学会として発展できるよう努力を重ねて参りたいと存じます.また,歴代会長ならびに中島英治前会長のもとで鋭意進められてこられた施策の成果を踏まえつつ,昨今の状況を考慮して国内外での「公益社団法人日本金属学会」のプレゼンスをより高めていく所存です.

ご承知のとおり,本年は,本会が公益社団法人に移行して6年目に当たります.昨年度,中島英治前会長の強いリーダーシップのもと,公益法人としてあるべき具体的な学会像を示した以下のような本会のビジョンが設定されました.すなわち,1.未来を先導する領域を開拓し,世界の材料科学・工学をリードする,2.最新の研究や技術を世界に発信する,3.多様な研究者・技術者が集い,最新の研究や技術の交流を図る,4.次世代を担う人材の教育や育成を行なう,5.会員や地域・社会のニーズに対応したサービスを提供する,という5つの具体像です.本年は,このビジョンに向けてアクションを起こしていく年と考え,以下のような方針をお示しして会員皆様のご理解とご協力をお願いしたいと存じます.

1. 堅固な財政基盤の構築と運営体制
 本会には,公益法人化の際に会員資格としての維持員制度を廃止したため,産業界の方々の本会における活動が激減し,財政悪化の原因の一つとなった経験があります.福富洋志元会長,白井泰治元会長ならびに中島英治前会長のもと,新たな維持員制度を設置し,産業界からの理事が選出されるような運営体制の変更も行って,産業界のご意見が反映されるようにしました.これにより維持員数の増加による財政の安定化と産業界の皆様の本会での活動の活発化等が期待されていることから,本年もこの方針を継続して取り組んでいきます.
2. 会員数の増加を目指して
 近年における本会の会員数の減少は,全国の大学・研究所等教育研究機関での金属系・材料系講座の減少並びに若者人口の減少が原因のひとつですが,深刻な問題としては学生会員が大学・大学院を卒業・修了後に退会することが挙げられます.本会の会員の年齢構成を見ても35歳以下の正会員数が他の年代の正会員数と比較すると極めて少なく,将来に渡る本会の継続的かつ活発な活動に支障を来すことが危惧されます.そこで,昨年度,会員の入り口である学生会員の会費の値下げをし,卒業・修了後もある一定期間はこの額の会費で本会への正会員として参加が継続できるような体制を構築しました.本年は,さらにこの策を広く周知させ,先に述べた維持員数の増加と学生会員数ならびに若手正会員数の維持により,会員数の減少に歯止めをかけたいと存じます.
 一方で,会員増加のための何よりの策は,「材料科学のすべてが日本金属学会で知れる」と本会の評価を高めることです.今後,長期的研究分野の開拓を視野に入れた材料戦略の策定や,後述する事業を通じて本会を魅力ある学会にしていくための策を講じていきます.
3. 講演会・講習会事業
 講演大会は,情報発信と研究者・技術者の交流の場として,最も重要な活動の場のひとつです.しかし,最近の材料研究の多様化,複雑化に伴う複数セッションでの内容の重複,刊行事業や表彰事業における研究区分との整合性,本会の強みであった研究分野のセッション消滅による関係研究者・技術者の流出,などが問題視されています.本年は,立場の異なるいずれの研究者・技術者にとっても魅力ある講演大会となるよう,セッション改編に取り組んでいく所存です.また,材料研究の多様化・細分化が進んでいることを考えれば,他の学協会とも連携を深めていくことは重要です.本年はその一環として,材料メーカーにとっても関心の高い自動車分野をとりあげ,その中心的学協会である自動車技術会と本会ならびに日本鉄鋼協会とが連携した合同シンポジウムを秋期大会からスタートさせます.さらに,学生会員の進路選択の手助けとなるように行ってきた企業説明会も,本年の春期講演大会から大会期間中に移動させたことにより参加学生数が増加しました.今後も業界セミナー等を計画するなど企業と学生会員との関係構築に貢献していきたいと存じます.
 一方,講習会は講演大会委員会が先導してきましたが,本年から講習会もセミナー・シンポジウム委員会がセミナー,シンポジウムとともに統括し,有益な講習会を企画していきます.また,若手研究者・技術者の啓発・人材育成など本会の活動に積極的に参画していただくために,本年春期大会の際に認定したフェローの皆様にも講師などでご協力いただき,本会のこれらの活動,さらには各支部における講演会等の活性化に貢献していきます.
4. 調査・研究事業
 本会のビジョンにおける未来を先導する領域を開拓し,世界の材料科学・工学をリードする学会となるためには,従来の分科会活動をさらに活発化させ,若手研究者を含めて本会の将来の更なる発展に向けた戦略を練っていく必要があります.日本金属学会には歴代執行部と事務局のご尽力のおかげで財政的な蓄えがあることから,この資源を有効活用するために中島英治前会長時代に各分科会への活動支援,若手研究会設立支援などを行ってきました.本年はこれらの支援を継続するとともに,従来の分科会を調査・研究委員会と位置付けて再編を検討し,有効な活動を推進できるような体制強化を図っていきたいと存じます.
5. 刊行事業
 会報,会誌,欧文誌の発行は,学会活動の根幹を成すものです.これらの発刊は,今後も会員サービスの根幹として維持してゆく必要がありますが,日本金属学会誌,MaterialsTransactions両誌のインパクトファクターが近年,低い値です.編集委員会で共同刊行事業も含めてさまざまな対策を講じていきますが,本会の情報発信力を将来にわたって維持するためには,会員各位からの良質な論文の投稿が不可欠ですので,ご協力を切にお願いいたします.
6. 表彰・奨励事業と支部活動
 本会の表彰・奨励事業は,会員の皆様の研究活動の意欲を高めるとともに,人材の育成にも欠かすことのできないものです.会員の皆様のご推薦とご協力をお願いいたします.また,支部活動も本会の活性化に大きく貢献していただいています.先に上げたフェローの皆様の講師などでの御協力を得て,さらに人材の教育や育成や支部活動の支援に努めていきたいと考えています.

以上のように,本会の活動を活発化し,材料科学・材料工学の中心的学会として我が国ならびに世界の材料研究の高度化に貢献できるよう努力して参ります.会員各位ならびに事務局さらには各支部の皆様のご理解,ご協力,ご鞭撻をお願い申し上げます.

2018年4月24日