会 長 就 任 の ご 挨 拶

公益社団法人 日本金属学会第66代会長 中 島 英 治

このたび皆様方のご推挙により日本金属学会の会長に就任することになりました. 大変光栄に存じます.本会の重厚な歴史と光り輝く実績を考えますと,責任の重大さを痛感するとともに,身の引きしまる思いであります. 本会副会長の杉本諭博士,細田秀樹博士,乾晴行博士をはじめとして,理事各位,代議員各位,委員各位,常設 8支部の支部長および支部構成員各位,すなわち会員の皆様ならびに山村英明事務局長および事務局の皆様の力をお借りして,金属材料分野の発展のために微力ながら全力を尽す所存であります. 皆様方の倍旧のご支援とご鞭撻を賜りますよう宜しくお願い申し上げます.

日本金属学会は,「金属に関する理論ならびに工業の進歩発達をはかること」を目的として,1937年に「金属之密林の大いなる開拓者」本多光太郎先生のご提唱により創設されました. その後,急速に進展する社会の要請に伴い,近年は社会基盤材料のみならずエネルギー材料,エコマテリアル,電子・情報材料,生体・福祉材料に亘る先端材料の創製と機能発現機構の探求など幅広い材料科学・材料工学の研究成果発信の場となっております. したがいまして,本会は,その将来においても材料系学協会の中でリーダーシップを発揮するとともに材料分野の重要性と材料研究者・技術者の存在感を世界にアピールする学会として発展するように努力して参りたいと思っております.

以下に,歴代会長ならびに白井泰治前会長のもとで鋭意進められてこられた施策の成果を踏まえつつ,昨今の状況を考慮した本年度の主な活動目標について述べます.

1. 財政基盤
 公益法人制度改革関連法令が2006年6 月2 日に公布され,2008年12月1 日に本会は特例社団法人に移行しました. その後,2012年7 月31日に公益社団法人への移行認定申請を行い,2013年3月1日に旧法人の解散と公益社団法人の設立をいたしました. 公益法人では,「金属及びその関連材料の学術及び科学技術の振興に関する事業を行い,不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与すること」を目的としました. 公益法人化に際して,会員資格としての維持員制度を廃止しましたことにより,産業界の方々の本会での活動が激減し,これが本会の財政悪化の原因の一つであると考え,白井前会長の強い指導のもと,新たな維持員制度を設置し,理事会構成員の変更を行いました. 最新の情報によりますと,財政の好転の兆候が見られ始めました. 今後,公益法人化前の状態まで維持員数が復活いたしますと,財政の安定化ならびに産業界の方々の本会での活動が活発化し,良き循環が発生するものと期待されます.
2. 会員
 会員数の減少は,全国の大学・研究所等教育研究機関での金属系講座の減少並びに若者人口の減少による当然のことでありますが,深刻な問題は学生員が大学・大学院を卒業後,大量に退会することであります. 学生員の退会は本会での若手研究者の研究活動量の低下を招き,将来に渡る本会の継続的かつ活発な活動を阻害するものであります. そこで,会員の入り口である学生員の会費を値下げし,卒業後もある一定期間はこの額の会費で本会の活動が継続できるような政策を構築したいと思っております. 先に述べた維持員数の増加と学生員数の維持により,会員数の減少に歯止めをかけ,増加に転ずることができるものと期待しております. 一方で,本会の本質である金属材料分野の研究活動を国内外で活発化し,エネルギー環境問題で閉塞化している国内外の状況を金属材料分野の研究が突破していくような強い研究分野とすることが,本会活性化の何よりの策であると思います. そのため,長期的研究分野の開拓を視野に入れた材料戦略の策定に取り組みます.
3. 講演大会
 本会の講演大会は創立時の精神により,基本的には日本鉄鋼協会との同時開催であります. しかしながら企業からの講演大会参加者は会員数の割合に比べ少なく,さらに企業からの講演は極端に少ないのが現状であります. 維持員の増加により両講演大会との掛け持ちが増え,会員に多大なご負担を強いることになることが想定されます. そこで,現在も実施されていますが,共同セッションを増やすことにより,会員の負担を減らし,金属材料の生産技術から金属物性まで議論できるセッション構成の構築を行いたいと思います. そのためには分野の再編が必要であり,早急に検討を開始したいと思います. このようなセッションから新規に明らかにされた理論から金属材料を創生するプロジェクトが生まれる可能性があります. また,逆に伝統的な生産技術で未解明の技術の理論的基礎を与える研究も生まれる可能性があります. 講演大会の場から新たな研究の芽が生まれることを強く意識し,お互いの研究を切磋琢磨する道場としたいと思います.
4. 会報,会誌,欧文誌
 会報,会誌,欧文誌の発行は,学会活動の根幹を成すものです. これらの発刊は,今後も会員サービスの根幹として維持してゆく必要がありますが,日本金属学会誌,Materials Transactions 両誌のインパクトファクターが近年,低い値であります. 編集委員会でさまざまな対策を講じていきますが,本会の情報発信力を将来にわたって維持するためには,会員各位からの良質な論文の投稿が不可欠ですので,ご協力を切にお願いいたします.

おわりに,現在,日本金属学会は歴代執行部と事務局のご尽力のおかげで,財政的な蓄えが多くあります. このゆとりがあるうちに,将来の更なる発展に向けた基盤作りを急ぐ必要があります. 本会の事業が益々盛んになり,金属分野の人材育成と材料研究を通じて社会に多大な貢献ができるように誠心誠意努めてまいります. 会員の皆様方ならびに事務局のより一層のご理解とご支援を,何卒,宜しくお願い申し上げます.

2017年4月24日