年頭のご挨拶

公益社団法人日本金属学会 会長 白井泰治

白井会長

皆様,新年明けましておめでとうございます.

年頭に当たりまして,今事業年度にこれまでに実施されました主な事業と,理事会等で議論され, 実施に移されました事項等をご報告申し上げます.

まずは,会長就任のご挨拶(まてりあ第55巻第6号7頁)で述べさせていただきました産業界との連携強化と財政基盤の安定化対策としての, 維持員(企業・団体会員)制度の導入について,ご報告いたします. ご承知のように,本会は公益社団法人への移行に際し,企業・団体を会員とする維持員制度を廃止いたしました. 社員に関する権利を持たない会員の会費は使用目的に限定のない寄付とみなされて一般正味財産となり, 公益法人として満たすべき財務基準(収支相償,遊休財産規制)に適合しない恐れがあることから,維持員を終了し, 指定正味財産となる使途を限定した刊行事業拡充賛助寄付金を導入しました. しかし,公益法人移行後の収支状況の悪化により,公益法人として満たすべき財務基準に抵触する可能性は低いことが明らかとなりました. 一方で,寄付金を指定正味財産としたために,事業に使うためには, 年度末前にあらかじめ収支相償を満足する範囲で一般正味財産へ振替えることが必要となり, また他の事業に使用できないことから,寄付金を事業に有効に活用することが困難となっておりました. その一方で,産業界からの声が,活動に反映されにくい状況となっておりました. そこで,この状況を改善すべく,昨年度来の度重なる理事会の議論を経て,企業や団体を会員とする維持員制度を復活することといたしました. 2016年10月6 日の臨時社員総会において, 「本会の目的に賛同し事業を支援する法人または団体」を維持員として本公益社団法人の構成員とする定款の改訂が満場一致で承認されました. 旧維持員との違いは,各団体から推薦された個人に正員資格を与え,新たに設けた本部枠の代議員・理事の被選挙権を与える点です. この中から最大4 名の方が本部枠理事として社員総会で選任され,理事会で直接産業界からのご意見・ご要望等をご発言いただくこととなりました. 今後,より緊密な産官学連携と財政基盤の安定化を通じて,本会の更なる発展が期待されます.

本事業年度に実施された大きな事業としては,2016年8 月1 日から5 日までの5 日間にわたり,国立京都国際会館において, PRICM9(第9回環太平洋先端材料とプロセシング国際会議)が,本会の主催で盛会裏に開催されました.ご承知のとおり, PRICM は,環太平洋5 カ国(中国,韓国,米国,オーストラリア,日本)が共同主催し,1992年からほぼ3年ごとに開催されています. 日本は第4回会議(2001年)の主催国でありましたが,米国での同時多発テロSeptember 11による不測の事態でやむなく中止しており, 今回の第9回会議が日本での初めての開催になりました. 古原忠組織委員長(東北大学)と梶原義雅特別顧問(前事務局長)のもと,事前に計8回にも及ぶ国際,国内組織委員会を開催して,周到な準備が進められました. その結果,28カ国から1,132名の参加があり971件の講演が行われ,活発な議論と情報交換そして研究者間の緊密な国際交流が行われました. 財政的にも大きな黒字となり,本会の経常収支にも大きな貢献をいただきました.組織委員はじめご関係各位に厚くお礼申し上げます.

2016年秋期講演大会は,14年ぶりに大阪大学で開催されました.さらに今回初めて豊中キャンパスでの開催となりました. 豊中キャンパスには大阪大学の全学共通教育のための講義棟が完備されており,そこを使わせていただくことで, かつてないほどコンパクトで会場間の移動も大変効率が良い,理想的な講演会場となりました. 掛下知行大会実行委員長はじめ,関西地区の実行委員の皆様方のご尽力に厚くお礼申し上げます. また快く会場をご提供いただきました大阪大学の西尾章治郎総長,本講演大会を工学研究科共催としていただき, 運営面および財政面で多大なご支援をいただきました田中敏宏工学研究科長に深く感謝申し上げます. 秋期大会の講演総数は926件で,主な内訳は一般講演447件,公募シンポジウム講演162件,ポスターセッション221件です. 昨年の秋期大会より9件増加しており,近年続いていた講演数の減少に歯止めがかかったようにも見えますが,さらに魅力的な講演大会にするための改革が必要と考えます. そして,金属およびその関連材料の学術および科学技術分野におけるハブ学会としての役割を果たし続ける責務があると思います.

本会は,2013年3月1日に公益社団法人に移行しましたが,移行後初めて昨年10月3日に内閣府公益認定等委員会の立ち入り検査を受けました. 仙台の本会事務局応接室に2名の調査官が来られ,本会側は会長,山村英明事務局長,早坂修経理担当副主任と公認会計士が対応しました. 27年度の事業報告,28年度の事業計画書を基にし,法令上作成することとされている書類の確認,社員総会・理事会の招集・開催・決議等のガバナンスが適正に行われている事, 個別の事業が適正に実施されている事,財産管理や会計処理等の財務管理が適正に行われている事を,書類・現物を確認しながら検査されました. 終了後,社員総会・理事会・役員に関する手続き等のガバナンス,各公益目的事業の実施,財務管理もきちんと行われており,理事会の出席率も高いと肯定的な講評をいただくことが出来ました. 公益社団法人化を計画後,時間をかけ慎重かつ丁寧に定款,細則および諸規程の改訂を進め,また公益法人移行後も, 事業の公益目的事業化および財政の収支相償等の実現ならびに法人運営におけるセルフガバナンスの強化等に尽力してこられた, 多くの役員の方々と事務局のご尽力の賜物と,この場を借りまして厚くお礼申し上げます.

最後に日本金属学会誌およびMaterials Transactions の状況についてご報告いたします. 後者の欧文誌については,インパクトファクター(IF)の下げ止まりに成功しつつあります. これは,編集委員,査読者の先生方の公正で厳密な査読によって,質の低い論文の掲載が抑えられてきたことに負うところが大きいと考えられます. しかしより積極的にIF を向上させるためには,会員の皆様から,質の高い論文を積極的に投稿していただくことが最も重要と考えます. 少しでもご協力いただけるように,今後は引用回数の多い論文10編をJ-STAGE のRecommended Papers に表示することにいたしました. 是非ご投稿をお願いいたします.日本金属学会誌につきましては,日本語であるために低いIFに甘んじていますが, 会員特に若手会員や現場の技術者向けの啓発的役割を考慮し,母国語の歴史ある専門誌を今後も維持していきたいと考えます. 一時は論文数が減少し危機的状況になりましたが,投稿掲載費用を無料化することで投稿論文数を増やすことに成功しました. また現在は,編集委員のご尽力により,和文誌,欧文誌ともに,優れた特集記事やオーバービュー,レビューを積極的に企画いただいています. このような状況が今後も続くことを期待します. なお,両誌のより継続的な発展を図るため,これまで理事から選ばれていた編集委員長を,今後は編集委員会からの推薦を受け理事会で承認し,任期も2年(再任可)とすることになりました.

以上,思いつくままに本会の近況を書かせていただきました. 会員諸氏からの忌憚のないご意見と,叱咤激励を期待いたします.

最後になりましたが,本会は本年2 月14日に創立80年を迎えます. これまでの諸先輩およびご関係の皆様の本会へのご尽力,ご貢献に深く感謝申し上げるとともに, 本会のさらなる発展および会員各位のご健勝とますますのご活躍を祈念致しまして,年頭のご挨拶とさせていただきます.

2017年1月1日